中小企業省力化投資補助金は、IoT・ロボットなどの人手不足解消に効果がある設備を導入するための費用の一部を補助する制度です。中小企業の生産性向上や売上拡大を目的とし、省力化に向けた投資を後押しします。
近年、人がおこなう作業を機械やロボットに任せられる「省力化」が注目されていますが、導入にはコストが必要とされるため実現できない企業は少なくありません。しかし補助金を活用すれば、IoT・ロボットを取り入れやすくなり、業務の効率化や事業拡大につなげることが可能です。
本記事では、中小企業省力化投資補助金の概要や2種類の補助類型、企業が活用するメリットについて解説します。
中小企業省力化投資補助金とは、IoT・ロボットなどの人手不足解消に効果がある設備を、導入するための費用の一部を補助する制度です。企業が省力化を進められるよう、「事業費」の一部を負担し、生産性向上を後押しします。
近年、日本では少子高齢化が深刻となり、その深刻さは日本企業の人材不足につながっています。また、人材不足が深刻となっていくことで従業員一人一人の負担が増加し、労働環境の悪化にもつながっているのです。そして労働環境が悪化していくことで、転職・離職をおこなう人材も増え、人材の確保・定着が進まないといった悪循環に陥っています。
そんな人手不足の解消と生産性の向上を図るために注目されたのが『省力化』です。省力化とは、業務の無駄を省いて作業量や業務量を削減し、業務効率を向上させる取り組みのことを指します。
ただ、ロボットやツールを用いた省力化をおこなうにはコストが必要とされるため、実現できない企業は少なくありません。しかし、そんな中小企業に対して、導入するための費用の一部を補助して後押ししてくれるのが、中小企業省力化投資補助金です。
経済産業省の令和6年度補正予算案により、2025年から補助上限が1億円に引き上げられました。また、全体の規模としても3,000億円を目処に実施される予定です。
元々は1,500万円の上限でしたが、大幅な引き上げにより、企業にとってより活用しやすい補助金制度となりました。
本制度には「カタログ注文型」と「一般型」の2種類があり、それぞれで設備導入の流れや補助される金額が異なるため、十分に理解しておくことが重要です。
『カタログ注文型』は、生産性向上や人手不足対策に適した汎用製品を、カタログから選択して購入する方式です。自社の課題・業種・業務プロセスにあった製品を選んで、販売店(販売事業者)と共同で申請する流れとなります。
補助率は2分の1で、補助上限額は従業員数によって異なります。また、省力化製品の導入後に、一定の賃上げを実施すると、補助上限額の引き上げ優遇があります。
※引用:カタログ注文型とは
カタログには、製品の対象となる業種や具体的な省力化効果、どのような業務プロセスに活用可能かなどが掲載されています。自社にどのような好影響を与えてくれるのかを理解したうえで、補助金制度を活用できるでしょう。
『一般型』は、事業や現場の状況に応じた設備を導入できる方式です。こちらは令和7年からの新設が決定しており、カタログ注文型とは異なり、オーダーメイド性の高い設備やシステムを導入できるようになっています。
補助率は中小企業が最大2分の1、小規模・再生事業者が最大3分の2で、補助上限額は従業員数によって変動します。また、一定以上の賃上げをおこなった場合の補助上限額優遇もあります。
※引用:一般型とは
さらに、一般型はカタログ注文型に比べて適用範囲が広く、高額な設備の導入にも対応可能です。
また、一部の補助金制度で求められる「収益納付」の義務がなく、企業の発展に存分に活用可能です。
補助金制度を活用することで、経済的な援助を受けながらさまざまなメリットを享受できます。ここからは以下の3つのメリットについて解説します。
制度活用の最大のメリットは、生産性向上と人手不足の解消です。今まで従業員が担っていた業務を導入した機器がおこなうことで、従業員たちの負担を減らすことが可能となります。
負担が軽減されることで、限られた人数で業務を問題なく遂行できたり、労働時間の削減につながったりするでしょう。労働環境が改善されることで長期的な人材の定着にもつながることが想定されます。
また、従業員が担っていた業務を導入した機器に実施させると、従業員たちをメインとなる業務につかせたり、より高い付加価値を生み出せる業務に取り組ませたりすることが可能となります。
補助金を活用して設備を導入すれば、生産性向上や業務の効率化が進み、事業の成長が期待できます。事業が拡大することは持続的な賃上げも可能となり、従業員たちのモチベーションの向上や満足度の向上が見込めるでしょう。
また、働きやすい職場環境を整備することは今いる従業員たちの定着にもつながるうえに、これから入社を検討する人材へのアピールにもなります。人材定着と人材確保の両方を図れるでしょう。
補助金の申請をおこなう際、導入する製品の販売事業者から手続きのサポートを受けることができます。
また、製品の運用方法や活用のポイントについてもサポートを受けられるため、事業拡大・生産性向上のために製品をより効果的に活用できるようになります。
中小企業省力化投資補助金の申請は、以下の流れでおこなうのが一般的です。
カタログ型は2024年8月9日より交付申請の受付が開始されましたが、8月9日以降の交付申請は随時受付となっており、採択・交付決定も随時おこなわれています。
一般型の申請は2025年1月30日から受付が始まり、2025年3月31日が公募締切となっています。採択結果の発表は2025年6月中旬を予定しています。
今後も申請受付は定期的に実施されることが考えられますが、スケジュールは今後随時決まっていくようです。公式のホームページをこまめに確認するようにしましょう。
また、申請の際には「GビズIDプライムアカウント」の取得が必要になります。電子で申請をおこなうために必須となるもので、取得には一定の時間がかかることが想定されます。新たに取得する場合は、早めにGビズIDプライムアカウントを取得しましょう。
中小企業省力化投資補助金を利用することで、経済的な援助を受けながらIoT・ロボットなどの設備導入を実現し、事業拡大や効率化を促進できます。その結果、働きやすい職場環境の整備や持続的な賃上げにつながり、人材定着・人材確保がしやすくなるよいサイクルが生まれるでしょう。
慢性的な人材不足や低い生産性に頭を悩ませている経営者・事業主は、ぜひ活用を検討してみてください。