コラム

省エネ・非化石転換補助金とは?工場・事業場の設備更新に使える補助制度を解説

電気代や燃料費の上昇が続くなか、工場や事業場における省エネ・脱炭素への投資は、コスト削減と環境対応の両面で欠かせない取り組みとなっています。しかし、高効率設備への更新や燃料転換には相応の費用がかかるため、なかなか踏み出せない事業者も少なくありません。

そのような事業者を支援するため、経済産業省(資源エネルギー庁)が用意しているのが「省エネ・非化石転換補助金」です。一般社団法人環境共創イニシアチブ(SII)が事務局を担い、工場・事業場の省エネ設備導入から、電化・燃料転換、EMS(エネルギー管理システム)の導入まで、幅広い取り組みを支援する制度です。

本記事では、制度の概要から4つの事業区分、補助率・上限額、申請の流れまでわかりやすく解説します。

参照:省エネ・非化石転換補助金

省エネ・非化石転換補助金とは

省エネ・非化石転換補助金は、正式名称を「省エネルギー投資促進・需要構造転換支援事業費補助金」とする、経済産業省(資源エネルギー庁)が所管する補助制度です。制度の目的と、運営元・対象事業者を確認していきましょう。

制度の目的と概要

省エネ・非化石転換補助金とは、省エネ性能が高い設備を導入する際、その費用の一部を国が支援する制度です。原油価格や電力コストの上昇により、製造業を中心にエネルギーコスト負担が大きくなっているなか、省エネ設備への更新は有効な対策となりますが、初期費用の大きさから投資判断が難しいケースも少なくありません。本補助金は、こうした投資負担を抑える役割を果たしています。

また、この制度は「非化石転換」も支援の対象としています。非化石転換とは、石油・石炭・天然ガスなどの化石燃料に依存するエネルギー設備を、電気・水素・低炭素燃料など非化石由来のエネルギーに切り替えることです。省エネ法(エネルギーの使用の合理化及び非化石エネルギーへの転換等に関する法律)に基づく取組で、カーボンニュートラルの実現に向けた重要な施策として国が推進しています。事前に事業計画を立てて申請し、審査の結果採択された事業が補助金交付の対象となる仕組みです。

運営元・対象事業者

本補助金の事務局は、一般社団法人環境共創イニシアチブ(SII)が担っています。対象となるのは、国内で事業を営むすべての法人・個人事業主です。事業区分によって対象条件は異なりますが、比較的取り組みやすい「(Ⅲ)設備単位型」の従来枠であれば、変圧器・LED照明・空調・業務用給湯器など、SIIが定めた指定設備への更新が対象となり、事業所全体の省エネ計画を組む必要がないため、中小企業や小規模な設備更新でも活用しやすい点が特徴です。

補助対象となる事業の下限額は30万円からと幅広く設定されているため、比較的小規模な投資でも申請が可能です。ただし、いずれの事業区分においても、交付決定前に設備の発注・契約を行った場合は補助対象外となるため、申請の順序には注意が必要です。

4つの事業区分

省エネ・非化石転換補助金は、事業の規模や目的に応じて4つの事業区分に分かれています。

  • (Ⅰ)工場・事業場型
  • (Ⅱ)電化・脱炭素燃転型
  • (Ⅲ)設備単位型/GX設備単位型
  • (Ⅳ)エネルギー需要最適化型

それぞれの特徴を見ていきましょう。

(Ⅰ)工場・事業場型

工場・事業場型は、工場・事業場全体を対象に、大規模な省エネ・非化石転換を支援する事業区分です。補助上限額は最大15億円(非化石転換の場合は20億円)と、4区分の中でも特に大規模な投資に対応しています。

事業所全体での省エネルギー計画を策定できる事業者や、補助対象経費が5千万円を超えるような大規模な設備投資、複数年度にわたる継続的な設備更新計画がある場合、またサプライチェーン上の複数企業で共同実施する場合などに適した区分です。

申請単位において、省エネ率+非化石割合増加率10%以上など、原油換算量ベースでの一定の要件を満たす必要があります。

(Ⅱ)電化・脱炭素燃転型

電化・脱炭素燃転型は、化石燃料から電気や水素対応設備への更新など、電化や脱炭素を目的とした燃料転換を支援する事業区分です。対象となる指定設備区分には、産業ヒートポンプ・業務用ヒートポンプ給湯器・高性能ボイラ・高効率コージェネレーション・低炭素工業炉などがあり、既存設備の水素燃焼対応への改造も支援対象となります。補助上限額は3〜5億円程度、補助率は1/2以内が目安です。

特徴的なのは、補助対象経費に設備費だけでなく工事費も含まれる点で、炉の更新などに伴う工事費が補助対象となったことで、より利用しやすい制度になっています。ただし工事費は原則中小企業のみが対象で、水素対応のための改造に限り大企業も適用されます。

(Ⅲ)設備単位型/GX設備単位型

設備単位型は、SIIが定めた指定設備への更新をピンポイントで支援する事業区分です。業務用エアコン・LED照明・変圧器・給湯器など、さまざまな業種で横断的に使われる汎用的な15設備区分が対象となっており、事業所全体の省エネ計画を策定する必要がないため、比較的取り組みやすい枠です。

補助上限額は1〜3億円、補助率は1/2・1/3・1/5などとなっており、補助下限額は30万円と小規模な更新でも対象になります。このうち、第三者委員会が定めたトップ性能基準を満たす設備を導入する場合は「GX設備単位型(トップ性能枠)」として、新設事業も一部対象となる点が特徴です。

(Ⅳ)エネルギー需要最適化型

エネルギー需要最適化型は、EMS(エネルギー管理システム)の導入によって、事業場全体のエネルギー需要の最適化を図る事業区分です。SIIに採択されたエネマネ事業者と、登録されたEMSを用いることで、より効果的な省エネルギー化を実現することを目的としています。

補助上限額は1億円程度で、単独での申請ではなく、(Ⅰ)工場・事業場型や(Ⅲ)設備単位型と組み合わせて申請する形が基本となります。設備更新だけでなく、運用面からのエネルギー効率化にも取り組みたい事業者にとって、他の区分と併用することでより高い省エネ効果を目指せる区分です。

補助率・補助上限額の目安

省エネ・非化石転換補助金の補助率・補助上限額は、事業区分や申請枠によって異なります。以下に主な内容をまとめました。

事業区分補助率補助上限額
(Ⅰ)工場・事業場型中小企業2/3・大企業1/2以内最大15億円(非化石転換は20億円)
(Ⅱ)電化・脱炭素燃転型1/2以内3〜5億円程度
(Ⅲ)設備単位型[従来枠]1/2・1/3・1/51億円
(Ⅲ)GX設備単位型(トップ性能枠)更新1/2以内・新設1/5以内3億円
(Ⅳ)エネルギー需要最適化型—1億円程度(他区分と組み合わせ)

※上記はあくまで目安です。補助率・上限額は年度や申請枠、事業者の規模によって異なる場合があります。最新の公募要領を必ずご確認ください。

いずれの事業区分も、補助対象となる事業の下限額は原則30万円からとなっており、小規模な設備更新から大規模な工場全体の省エネ計画まで、幅広い投資規模に対応できる制度設計になっています。

特に(Ⅲ)設備単位型は補助率・上限額ともに比較的シンプルな設定のため、初めて本補助金を活用する事業者にとって取り組みやすい選択肢といえます。一方、(Ⅰ)工場・事業場型は補助上限額が最も大きく、大規模な脱炭素投資を計画している事業者にとって有力な区分です。採択は予算の範囲内で行われるため、補助上限額いっぱいの支援が必ず受けられるわけではない点にも留意しておきましょう。

申請の流れと注意点

省エネ・非化石転換補助金は、公募期間が限られており、事業区分ごとに手続きの流れも異なります。スケジュールと注意点を把握したうえで、計画的に準備を進めることが重要です。

申請手順とスケジュール

2026年(令和7年度補正予算)は、1次公募が2026年3月30日〜4月27日、2次公募が6月1日〜7月9日、3次公募が8月20日〜9月28日というスケジュールで実施されており、工場・事業場型/設備単位型で共通のスケジュールとなっています。

申請手順は大まかに、

①補助事業ポータルでのアカウント作成

②事業区分・申請枠の選択

③事業計画書・省エネ効果計算書などの必要書類の作成

④SIIへの申請書類の提出(配送状況が確認できる方法での郵送)

⑤外部審査委員会による審査

⑥交付決定

⑦事業実施・完了報告

という流れで進みます。

採択事業者の決定にあたっては、事業区分ごとに評価項目に従って審査が行われ、外部審査委員会の評価を踏まえて予算の範囲内で上位者から採択される仕組みです。

1次公募の場合、交付決定は6月中旬、事業完了期限は翌年1月31日までとされています。

申請時に押さえておきたいポイント

申請にあたって最も注意すべき点は、交付決定前に設備の発注・契約を行うと補助対象外になるということです。事業計画の検討段階で見積書を取得しておくこと自体は問題ありませんが、実際の契約・発注は必ず交付決定の通知を受けてから行う必要があります。

また、事業区分によって申請要件が異なる点にも注意が必要です。たとえば工場・事業場型では省エネ率+非化石割合増加率10%以上といった原油換算量ベースの要件が課される一方、設備単位型では対象設備がSIIの指定設備リストに該当するかどうかがまず重要な確認ポイントになります。

同じ設備であっても、(Ⅱ)電化・脱炭素燃転型と(Ⅲ)設備単位型の両方に登録されている場合は、補助率の高い区分を選択できることもあるため、複数の区分を比較検討することをおすすめします。申請書類の作成には専門的な知識を要するため、SIIに登録されたエネマネ事業者や専門家に相談しながら進めるとスムーズです。

まとめ|自社に合った事業区分を見極めることが活用のカギ!

省エネ・非化石転換補助金は、省エネ設備の導入から非化石転換まで、幅広い取り組みを支援する国の制度です。4つの事業区分にはそれぞれ異なる特徴があり、大規模な工場全体の省エネ計画には工場・事業場型、燃料転換を伴う設備更新には電化・脱炭素燃転型、単一設備のシンプルな更新には設備単位型、そして運用面からのエネルギー効率化にはエネルギー需要最適化型と、目的や投資規模に応じて選択できます。

同じ設備が複数の区分に該当する場合は、補助率のより高い区分を選べることもあるため、自社の状況を整理したうえで比較検討することが重要です。

ただし、いずれの区分でも交付決定前の発注・契約は補助対象外となるため、事前の準備と正しい申請順序を守ることが欠かせません。公募は複数回に分けて実施されるため、最新の公募要領を確認しながら、自社に合った事業区分を見極めて計画的に活用していきましょう。