近年は猛暑日が増え、職場における熱中症への備えがこれまで以上に重要になっています。なかでも、加齢に伴って暑さを感じたり体温を調整したりする機能が低下しやすい60歳以上の労働者は、暑い環境で作業する際に熱中症を発症するリスクが高いと考えられています。
こうした高年齢労働者の安全確保を後押しするため、厚生労働省の「エイジフレンドリー補助金」では、2026年度(令和8年度)より「熱中症対策コース」が設けられました。空調服やスポットクーラーなど、職場の暑さ対策に活用できる設備の導入費用について、一定額の補助を受けられる制度です。
本記事では、エイジフレンドリー補助金の基本的な概要から、熱中症対策コースの対象・補助内容、申請方法までわかりやすく解説します。
エイジフレンドリー補助金は、厚生労働省が実施する「高年齢労働者の安全衛生確保対策補助金」の通称です。2020年度(令和2年度)にスタートした制度で、少子高齢化に伴い60歳以上で働き続ける方が増えるなか、加齢による身体機能の変化から生じる転倒災害・腰痛・熱中症といった労働災害を防ぐことを目的としています。
中小企業事業者が対象で、専門家によるリスクアセスメント、作業環境の改善、身体機能の維持・向上に向けた取り組み、熱中症への備えなど複数のコースに分かれて申請できる仕組みになっており、企業は自社の課題に応じたコースを選択できます。
ここでは、制度の目的と、2026年度の主な変更点を確認しておきましょう。
エイジフレンドリー補助金は、60歳以上の従業員が1人以上在籍する中小企業を対象とした支援制度です。自社の労災保険が適用される高年齢労働者が働く事業場を対象に、事故や健康障害を防ぎ、安心して働ける環境を整えるための取り組みに対して、費用の一部が支給されます。
この制度が設けられている背景のひとつが、働く高年齢者の増加です。さらに、令和8年4月1日から改正労働安全衛生法が施行され、高年齢労働者の労働災害を防止するための措置が事業者の努力義務として定められました。
この法改正への対応を費用面から後押しする制度として、本補助金が位置づけられています。令和8年度は、1事業者あたり最大100万円までの補助を受けられます。専門家によるリスクアセスメントや設備改善、運動指導、熱中症対策、健康保持活動など、複数のコースに分かれて申請できる仕組みになっています。
令和8年度は、エイジフレンドリー補助金の予算規模が見直され、前年度の7.6億円から9.5億円へ増額されました。金額にすると1.9億円の増加で、前年度と比べて約25%拡大しています。
また、コース構成にも変更がありました。これまで熱中症対策は「職場環境改善コース(熱中症予防対策プラン)」の一部として扱われていましたが、令和8年度からは熱中症対策が独立したコースとして設けられました。現在は3つのコースから選んで申請する方式となっており、複数コースを同時に利用することはできません。また、申請できるのは1年度につき1回です。
さらに、令和8年6月26日にはリーフレットとQ&Aが更新され、自社でリスクアセスメントを実施する場合の取り扱いについても整理されています。
補助対象となる設備や取り組みも、毎年度同じとは限りません。たとえば令和8年度は、令和7年度には対象となっていたWBGT指数計が補助対象から除外されています。申請を検討する際は、必ず最新の公募要領を確認しましょう。
熱中症対策コースは、暑さによる健康被害を防ぐため、高年齢労働者が暑熱環境で働く事業場を支援する制度として、令和8年度から新たに設けられました。
これまで熱中症への対応は「職場環境改善コース」に含まれるプランの一つでしたが、近年の気候変動により屋外作業や暑熱作業における高温環境での作業リスクが高まっています。こうした状況を踏まえ、令和8年度からは熱中症対策を単独で申請できるコースとして位置づけられました。また、他のコースと異なり段階を分けずに手続きを進められる点もポイントです。
ここでは、対象事業者・補助率・対象設備を詳しく見ていきましょう。
熱中症対策コースの対象となるのは、対象となるのは、所定の規模要件を満たした中小企業事業者です。
まず、役員を除いて60歳以上の労働者が1人以上、継続的に勤務していることが求められます。この労働者は自社の労災保険の適用対象である必要があります。雇用形態は問われないため、パートやアルバイトとして働く60歳以上の従業員が該当する場合もあります。
企業規模については、業種ごとに資本金や従業員数などの基準が定められています。ただし、定められた条件のうち、いずれか一方を満たしていれば対象となります。また、申請前の1年間に、厚生労働省が所管する法令に関して行政処分を受けたり、送検されたりしていないことも必要です。
対象となるのは、屋外で行う作業に加え、屋内であっても室温が31℃を超える、またはWBGT(暑さ指数)が28℃を超える環境で実施する作業です。このような高温環境で働く高年齢労働者の熱中症を防ぐための対策が、補助の対象となります。
熱中症対策コースでは、対象となる経費の2分の1が補助され、上限額は100万円(消費税を除く)です。
申請方法にも特徴があります。専門家総合対策コースのように複数の段階を経て申請する必要はなく、1回の申請で完結する点も特徴です。また、同じ年度に複数のコースを利用することはできないため、熱中症対策コースを申請する場合は、ほかのコースとの併用はできません。申請できる回数も年度につき1回です。
予算の上限に達すると受付期間中であっても締め切られるため、早めの申請が推奨されます。令和8年度の交付申請受付期間は令和8年5月20日から10月31日までで、予算がなくなり次第終了する仕組みです。
熱中症対策コースで補助対象となるのは、体温を下げる機能を持つ電動ファン付き作業服(空調服)、熱排気が可能な移動式スポットクーラー、アイススラリーや保冷剤を保冷できる冷凍ストッカー、深部体温を推定できるウェアラブルデバイスなどです。
ただし、すべての暑さ対策用品が対象になるわけではありません。たとえば、事務所や作業スペースに設置する固定型エアコンは対象外です。扇風機や送風機、サーキュレーターも補助の対象には含まれません。また、令和8年度からWBGT指数計も対象外となっています。また、経口補水液や保冷剤などの消耗品も対象外です。
なお、同じ高年齢労働者に対して、冷却を目的とする同種の機器を重ねて申請することはできません。たとえば、スポットクーラーとミストファンを同時に申請するのではなく、いずれか一つを選ぶ必要があります。
目的が異なる設備であれば組み合わせて申請できます。たとえば、作業中の冷却に使うスポットクーラーと、保冷剤などを保管する冷凍ストッカーを一緒に申請することは可能です。
熱中症対策コースを申請する際は、スケジュールと手順を正しく理解し、事前準備を整えておくことが重要です。エイジフレンドリー補助金は例年5月頃に公募に関する情報が示され、申請は先着順で進み、予算がなくなり次第受付が終了する仕組みになっています。
また、申請から交付決定までは一定の期間を要するため、余裕を持ったスケジュールで進めることが求められます。
令和8年度の交付申請受付期間は、5月20日から10月31日までとなっています。ただし予算の上限に達した場合は、受付期間中であっても締め切られるため、早めの申請が推奨されます。
申請の流れは、
という順番で進みます。
交付申請の書類は毎月末を区切りとして取りまとめられ、翌月に審査が行われる仕組みです。支払請求書類の提出期限は令和9年1月31日となっているため、交付決定から設備導入、請求書類の提出までのスケジュールを逆算して準備を進める必要があります。
書類準備や設備選定に時間がかかることも多いため、申請を検討し始めた段階から早めに動き出すことが採択への近道です。
エイジフレンドリー補助金の熱中症対策コースは、高温の環境で作業する60歳以上の従業員を対象に、熱中症を防ぐための設備導入を支援する制度です。令和8年度から新たなコースとして設けられ、対象経費の2分の1、最大100万円まで補助を受けられます。
利用できる設備には条件があり、電動ファン付き作業服や移動式スポットクーラー、冷凍ストッカーなどが対象となる一方、一般的な空調設備や送風機などは対象外です。購入したい製品が決まっている場合でも、申請前に補助対象となるかを確認しておきましょう。
また、交付決定前の発注は補助対象外となる点や、予算上限に達すると受付期間中でも締め切られる点にも注意が必要です。必要な設備や見積書、申請書類などを早めに確認し、計画的に手続きを進めることが大切です。