近年、燃料や電気料金などの価格が高騰しており、企業や工場の経営に大きな影響を与えています。今後も価格は上がり続ける見通しになっており、企業や工場には省エネ対策の実施が求められています。
省エネ対策と聞くと「コストの削減ができる」というイメージが強いかもしれませんが、工場設備の寿命の長期化や企業のイメージアップにも非常に大きな影響を与えます。
本記事では、工場で省エネ対策をするメリットや具体的な省エネ対策アイデアについて解説します。「会社で何か省エネ対策に取り組みたい」とお考えの方は、ぜひ参考にしてみてくださいね。
省エネは「省エネルギー」の略で、限られた資源であるエネルギーを効率的に使うことを指します。近年、燃料や電気料金などの価格が高騰していますが、製造業において価格高騰は非常に大きな問題です。そのため、十分な省エネ対策をおこなう必要があります。
省エネ対策をおこなうことは、さまざまなメリットがもたらされます。ここからは工場で省エネ対策をするメリットについて解説します。
現状、工場の製造工程にかかるエネルギー消費量が一定だとしても、燃料や電力料金などが値上げされるとコストはさらにかかってしまうことになります。しかし、省エネ対策をおこなって少ないエネルギーで製造を進められれば、結果としてコストダウンにつながります。
また、省エネ対策は新しい設備の導入が必要なものもあります。導入には初期費用がかかってしまいますが、長期的に見るとエネルギー消費量を抑えられ、ランニングコストが削減できるでしょう。また、単年で効果が切れてしまわずに、次年度以降も効果が継続する点も大きなメリットです。
工場の省エネ対策は新しい設備の導入だけではなく、現在使っている機器の定期的なメンテナンスや使っていない設備の電源をOFFにするなどの基本的な行動も重要です。基本的な行動を実施することで機器・設備の負担が軽減され、結果として省エネ対策と設備の長寿命化につながります。
省エネ対策を実施することで、企業のイメージアップにつながります。
近年、改正した省エネ法に代表されるエネルギー効率や排出基準などの法的規則が厳格化されました。特に最近では、温室効果ガスの排出量と吸収量を均衡させる「カーボンニュートラル」への取り組みを政府が推進しています。
これだけ国全体で省エネ対策に取り組もうとしている昨今なので、環境に配慮した行動をとることで企業のイメージアップになるでしょう。省エネに配慮した製造工程で製品を開発したり、再生可能エネルギーを活用したりすることで、社会的信頼性の向上につながります。
工場の省エネ対策には多くのアイデアや方法があります。ここからは具体的な省エネ対策のアイデアを8つ紹介します。
工場の古い照明を新しいものに変えるのはとても効果的です。特に白熱灯や水銀灯を使用している場合、LEDに変えるだけで高い省エネ効果が見込めます。
LEDは「発光ダイオード」と呼ばれる半導体で、電気エネルギーが直接光に変化する仕組みを応用したものです。消費電力が少なく、寿命が長いため、多くの製造業の工場で利用されています。また、電気を直接光に変換させる仕組みとなっていることから発熱量が少なく、赤外線や紫外線をほとんど放出しません。そのため、製造している製品への赤外線・紫外線によるダメージも防ぐことにつながります。
設置している空調設備を省エネ性能の高いものに切り替えるのもおすすめです。空調設備は年々製品の性能が高まっており、省エネ性能もかなり向上しています。もしも現在設置している空調設備が10年近く前のものだった場合、新しい空調設備に切り替えることで大幅に消費電力をおさえられる可能性があります。消費電力が少なくなることで、効果的なコスト削減につながるでしょう。
ヒートポンプとは周囲の空気や地中、水などの自然エネルギーを活用して、効率よく熱を移動させる技術です。電気やガスをそのまま熱に変えるのではなく、外部から取り込んだ自然のエネルギーを有効に利用するため、消費するエネルギーに対してより多くの熱エネルギーを生み出すことが可能となります。
工場の暖房でヒートポンプを活用すれば、大きな省エネ効果が期待できます。従来のガスや石油を使用するシステムに比べて電気代を大幅に削減でき、長期的なコストパフォーマンスが非常に良いと言えるでしょう。
ヒートポンプの仕組みについてさらに詳しく知りたい方は、以下の関連記事も参考にしてください。
関連記事:ヒートポンプってなに?原理や種類をわかりやすく解説!
電力使用量を削減するだけでなく、自然由来の発電をおこなうことも省エネにつながります。たとえば太陽光パネルを使った発電は、工場の稼働に必要な電力を社内で発電できるようになります。電力会社から電気を購入する量が減るため、電気代の削減が期待できるでしょう。
また、蓄電池を併用することで非常用電源としても活用可能です。自然災害によって工場の機能が停止しそうな時でも、蓄電池から電力を使用できるので工場の機能を維持できます。
太陽光以外にも、再生可能エネルギーにはさまざまな種類があります。具体的な種類としては以下の通りです。
これらは全て石油や石炭、天然ガスといった有限な資源である化石エネルギーとは違い、自然界に常に存在するエネルギーなので資源が枯渇せず繰り返し利用できます。自然現象の影響を受けてしまう可能性はありますが、資源の状況に左右されずにエネルギーの安定的な供給がおこなえるでしょう。
製品の製造工程はおおよそ定まっていることがほとんどですが、製造工程を見直すことも省エネ対策につながることがあります。
最適な製造設備となっているか、製造過程で自動化できる部分はないかなどを見直すことで、工程のなかでの無駄をチェックできます。無駄な工程を省くことは、エネルギーの無駄を削減することにつながるので、結果的に省エネ対策となるでしょう。
工場で利用している機器・設備のなかには、使用していないのに生産の都合で電源をつけている場合もあると思います。省エネのためには、使っていない機器を非稼働時に電源OFFにするようにしましょう。小さな行動ですが、この小さな行動の積み重ねが大きな結果につながります。
工場内の電力消費量をリアルタイムで可視化できるシステムを導入するのもおすすめです。
可視化された電力消費量のデータをチェック・分析することで、無駄が発生している場所や時間帯を特定しやすくなります。そのため「どのような対策をおこなえばいいか」が明らかになり、具体的な行動がおこしやすくなるでしょう。
工場の省エネを進める方法はさまざまありますが、ここからは一例として、省エネを進めるための3ステップを紹介します。
まずは、工場内の消費電力を可視化できるようにしましょう。可視化できるようにすると、無駄に電力を使っている場所の特定ができ、「なぜ無駄が発生しているのか」を考えることができます。
可視化したデータから、現状の分析をおこないます。どこで無駄が発生しているのか、なぜその場所で無駄が発生しているのかを考えましょう。無駄の原因が分かれば、具体的にどのような対策をおこなうかが考えやすくなります。さまざまな対策から、自社の課題にあった対策を選定しましょう。
対策が決定したら、社内での共有・対策の実施を進めましょう。ただ実施するだけではなく、定期的な効果測定が重要です。具体的にどのような効果があったのか、想定していたほどの効果はあったのかをチェックしましょう。
高い効果が得られ、「さらに省エネ対策をしたい」と考えた場合は、省エネにつながる設備を導入するのもおすすめです。初期の費用はかかりますが、長期的に見るとエネルギー消費量を抑えられ、ランニングコストが削減できるでしょう。
本記事では、工場で省エネ対策をするメリットや具体的な省エネ対策アイデアについて解説しました。省エネ対策をおこなうことで、コストの削減や設備寿命の長期化、企業のイメージアップなどさまざまなメリットがあります。燃料や電気料金などの価格が高騰し続けている今、省エネ対策の充実度が工場経営に大きな影響を与えるといっても過言ではありません。企業としてできることを考え、できる対策から取り組んでみましょう。