リース契約とは、設備や資材をリース会社から一定期間借り受けて使用する仕組みです。この契約では、所有権はリース会社に留まり、利用者は月々の費用を支払うことで対象物を利用可能となります。
弊社の工業設備・空調設備でもリース契約を利用されるケースがありますが、そもそもその形式がどういったものか、理解されていないこともあります。
リース契約を活用することで、設備投資の負担を軽くしたり、複雑な事務管理を省力化できたりなどさまざまなメリットがあります。企業の安定的な経営にもつながるため、経営者は必ず理解しておくべき内容だと言えるでしょう。
本記事では、リース契約の基本的な内容やレンタルとの違い、メリット・デメリットなどについて解説します。
リース契約とは、リース会社から設備や資材を一定の期間借りて活用する契約形態の一つです。この対象には、工場で使用される大型機器やパソコン・サーバーなどのIT機器、コピー機・複合機などのOA機器など、多種多様なものが含まれます。
自社で直接購入するわけではなく、必要な設備をリース会社に購入してもらい、その代わりに利用料金を支払う形となります。設備や資材の所有者はあくまでリース会社です。利用料の未払いがあれば、対象の設備や資材はもちろん回収されます。
リース期間は両者の打ち合わせのもと、使用期間や耐用年数に基づいて決定されます。期間が過ぎれば返却、もしくは同じ設備や資材を継続して利用するために再度契約を結ぶ「再リース」をおこなう必要があります。
よく似たものに「レンタル契約」「割賦販売契約」がありますが、これらはまた違ったものになります。
リースとレンタルの主な違いは、利用する設備や資材を選ぶことができるかどうかです。リースは必要とする機器や設備を指定し、その後リース会社が購入して提供します。一方で、レンタル契約は、レンタル会社が保有している機器の中から選んで借りる形となります。
また、レンタル契約では途中で解約することが可能ですが、リースは長期間にわたって設備や資材を使用することを前提としているため、中途解約が原則不可です。もし「どうしても解約したい」という場合は、違約金を支払うことで中途解約が可能なケースもあります。
「割賦販売契約」というものもありますが、こちらは分割での支払いのことで、賃借の形ではありません。リースと同じく導入したい設備や資材は指定できますが、指定されたものは信販会社が購入し、信販会社に分割で返済をおこなっていきます。分割の支払いをおこなっている期間は信販会社が所有権を持っていますが、支払いが完了した後はユーザーに所有権が移転します。こちらも分割の未払いがあれば、対象の設備や資材は回収されます。
設備投資の際にリースを活用することで、以下のようなメリットがあります。
リース契約は月々のリース料で設備や資材を導入できるため、直接購入より初期費用を大幅におさえられます。運転資金にゆとりを生むことができるでしょう。
さらに、金融機関からの借入が不要となるため、借入枠を確保しておくことができ、資金調達の面でも柔軟性を持つことができます。
リース契約は設備や資材を利用する期間によって契約期間を定めます。そのため、耐用年数に合わせた期間を設定すれば、設備の入れ替えを定期的におこなうことが可能です。
設備や資材の老朽化時期を予測して契約することで、常に最新の機器を利用できる利点があります。
また、自社で直接購入する場合だと、古い機器の処分をしなければいけません。機器の処分は廃棄物処理法のような環境関連法制に従って適正に処理しなければならず、かなり手間がかかってしまうおそれがあります。しかしリースだと、契約終了後はリース会社に変換するだけでよいので手間がかかりません。
リースで導入した設備には、リース会社の「動産総合保険」が適用されます。実はこの動産総合保険が非常に優秀なものとなっています。
動産総合保険は、偶然起きてしまった事故や自然災害によって機械が受けた損害を保証してくれるというものです。通常、設備で発生する取扱いミスや故障だけでなく、台風や暴風雨などによる洪水や砂崩れなどの水災・風災なども保証の対象となっています。かなり適用範囲の広い保険となっているので、安心して設備が利用できるでしょう。
自社で直接購入すると基本的には一括で支払わなければいけませんが、リース契約を利用すると、毎月一定の利用料金を支払うことができ、費用を均等に分散させることが可能です。さらに、リース料は賃貸借契約として扱われ、全額を経費として処理可能です。
月々の料金は固定されているので、金利変動の影響を受けることもありません。
直接購入の場合は、資金調達や償却事務、固定資産税の納付、損害保険の手続きなど、煩わしい事務負担が発生してしまいます。リースの場合だとこれらの負担もなくなり、契約終了後は設備や資材をリース会社に返却するだけで、その後の処理は全てリース会社が行ってくれます。社内の複雑な事務管理も省力化できるでしょう。
リースの利用には、以下のようなデメリットもあります。
リース契約は中途解約が原則不可です。もし「どうしても解約したい」という場合は、違約金を支払うことで中途解約が可能なケースもあります。残っている料金の相当額を支払う必要があることは把握しておきましょう。
また、リース料金は、手数料や支払利息、損害保険料などを上乗せして決められます。そのため、最終的な支払い総額は直接購入するよりも割高になる傾向があります。購入金額の総額のみを支払えばよいというわけではないので注意しましょう。
さらに、リースは「設備をリース会社に購入してもらい、その使用料を支払う」仕組みなので、設備や資材の所有者はあくまでリース会社です。そのため、勝手に機器を処分したり、売却したりすることはできません。
リースには、初期費用をかなり抑えられるという点に大きなメリットがありますが、最終的な支払総額は直接購入するよりも割高になります。そのため、「できる限り初期費用をおさえたい」「毎月一定額を経費として計上したい」と考える方には適しています。
一方で、「資金に余裕がある」「購入を一括で行える予算がある」場合には、直接購入をする方が向いているでしょう。
リース契約では、ユーザーが必要とする設備や資材を選び、その購入をリース会社に依頼して貸し出してもらう仕組みです。設備投資の負担を軽くしたり、複雑な事務管理を省力化できたりなどさまざまなメリットがあるため、企業の安定的な経営にも役立つでしょう。ただし、中途解約が原則不可、最終的な支払い総額は割高になるといった点も理解しておくことが重要です。
自社の経営状況や今後の見通し、設備投資をおこなった際の費用対効果など、さまざまな要素を考慮したうえで導入方法を検討してみてください。