工場や事業場の運営には、設備の更新・省エネ化・労働環境の改善など、さまざまな投資が求められます。しかしこうした取り組みには相応のコストがかかるため、なかなか踏み出せないという企業も多いのではないでしょうか。
そんなときに活用したいのが、国や自治体が用意している補助金・助成金制度です。省エネ設備の導入から、生産性向上のための機械投資、働く人の熱中症対策まで、工場が抱える課題に応じて使える制度は多岐にわたります。
本記事では、2026年度(令和8年度)に工場・事業場で活用できる主な補助金を、目的別に分けて一覧で紹介します。
工場のエネルギーコストは、電気代や燃料費の上昇とともに年々負担が大きくなっています。こうした課題に対応するため、国は省エネ設備への更新や脱炭素化に向けた取り組みを後押しする補助金を複数用意しています。
設備の規模や業種、対象となる機器の種類によって使い分けられるよう、制度ごとに特徴が異なるので、ここでは代表的な3つの補助金について見ていきましょう。
経済産業省が所管し、一般社団法人環境共創イニシアチブ(SII)が運営する補助金です。2026年度は制度が刷新され、「省エネ・非化石転換補助金」という名称に変わりました。
工場・事業場の空調・ボイラ・産業用モーターなど、省エネ性能の高い設備への更新を支援する制度で、設備単位で申請する「設備単位型」と、事業場全体で申請する「工場・事業場型」に分かれています。
2026年度からは新設設備も一部対象に加わり、補助上限の増額や、より高い省エネ効果を目指す事業者向けの優遇枠も新設されました。公募は複数回に分けて実施されるため、自社の設備状況に合った申請タイミングを見極めることが重要です。
参照:令和7年度補正予算「省エネルギー投資促進・需要構造転換支援事業費補助金」
環境省が実施する補助金で、通称「SHIFT事業」と呼ばれています。工場・事業場における脱炭素化の先導的な取り組みを創出し、その知見を広く共有することで、国全体の温室効果ガス削減目標の達成に貢献することを目的としています。
具体的には、CO2削減計画の策定支援と、その計画に基づいた高効率機器導入・電化・燃料転換・運用改善などの設備更新支援の2つで構成されているのが特徴です。中小企業向けの支援メニューも用意されており、DXシステムを活用した運用改善による即効性のある省CO2化を後押しする枠も設けられています。
脱炭素化に向けた取り組みを段階的に進めたい工場に適した制度です。
参照:環境省 SHIFT事業
環境省が実施する補助金で、一般財団法人日本冷媒・環境保全機構(JRECO)が執行団体となっています。冷凍冷蔵倉庫・食品製造工場・食品小売店舗を対象に、温室効果の高いフロン系冷媒を使用した機器から、二酸化炭素やアンモニアなどの自然冷媒を使用した脱炭素型機器への転換費用を補助する制度です。
エネルギー起源のCO2排出抑制と、フロン類の排出抑制を同時に進められる点が特徴です。食品関連の冷凍冷蔵設備を多く保有する工場にとっては、設備更新のタイミングで検討する価値のある制度といえます。
参照:コールドチェーンを支える冷凍冷蔵機器の脱フロン・脱炭素化推進事業補助金の第二次公募について | 報道発表資料
人手不足が深刻化するなか、工場にとって生産性向上は避けられない課題です。新しい設備やシステムを導入することで、限られた人員でも高い生産性を維持できる環境づくりが求められています。こうした投資を後押しするため、国は革新的な製品開発から省力化機器の導入まで、幅広い設備投資を支援する補助金を用意しています。
ここでは代表的な2つの補助金について見ていきましょう。
中小企業・小規模事業者を対象に、革新的な製品・サービスの開発や、生産プロセスの省力化に必要な設備投資を支援する補助金です。補助上限額は750万円〜4,000万円(グローバル枠)と幅があり、付加価値額や賃金の年平均成長率の向上を目指す事業計画への取り組みが要件となります。
2026年度(令和8年度)は制度の再編が進められており、新事業進出補助金との統合も検討されています。新しい設備への投資をきっかけに、製品やサービスの高付加価値化を目指す工場に向いている制度です。
参照:ものづくり補助金
人手不足に悩む中小企業の省力化投資を支援する補助金です。あらかじめ登録された汎用製品をカタログから選んで導入する「カタログ注文型」と、個別の現場に応じた設備・システムを導入する「一般型」の2種類があります。
カタログ注文型は手続きが比較的シンプルで導入しやすく、一般型はオーダーメイドの設備にも対応できるため、補助上限額も最大1億円と大きめです。いずれも「労働生産性の向上」を成果目標とする点が特徴で、賃上げを伴う場合は補助上限額が加算される仕組みも用意されています。
参照:中小企業省力化投資補助金
近年の猛暑により、工場で働く人の熱中症リスクは年々高まっています。特に高温になりやすい工場内での作業や、屋外での荷物の搬入出といった場面では、企業として積極的な対策が必要不可欠です。
こうした状況を受け、国や自治体は熱中症対策や労働環境の改善に取り組む事業者を支援する補助金・助成金を用意しています。
ここでは代表的な3つの制度を紹介します。
厚生労働省が実施する補助金で、高年齢労働者(60歳以上)が安全に働ける職場環境づくりを支援する制度です。2026年度(令和8年度)は制度が大きく見直され、「熱中症対策コース」が独立したコースとして新設されました。
屋外作業や、室温31℃・WBGT28℃を超える高温の屋内作業場が対象となり、体温を下げる機能のある服や、移動式スポットクーラーなどの導入費用が補助されます。補助率は1/2、上限額は100万円(消費税を除く)です。
背景には、2026年4月の労働安全衛生法改正により、高年齢労働者への労災防止対策が事業者の努力義務となったことがあり、対応が急がれる工場にとって活用価値の高い制度といえます。
厚生労働省が実施する助成金で、時間外労働の削減や年次有給休暇の取得促進など、働き方改革に向けた職場環境の整備を支援する制度です。複数のコースが用意されており、「労働時間短縮・年休促進支援コース」では、時間外・休日労働の上限設定や年次有給休暇の計画的付与の導入などを成果目標に設定し、その達成に向けた取り組みにかかる費用が助成されます。
対象経費には、労務管理用のソフトや機器の導入、外部専門家によるコンサルティング費用などが含まれます。助成額は対象経費の合計額に補助率をかけた額と、成果目標ごとの上限額のいずれか低い方が適用される仕組みです。
参考:働き方改革推進支援助成金(労働時間短縮・年休促進支援コース)
東京都が2026年度に新設した奨励金で、都内の小規模企業者を対象に、熱中症予防対策に取り組む事業者を支援する制度です。WBGT値28度または気温31度以上の作業場で、継続して1時間以上、または1日4時間を超える作業が見込まれる職場があることが対象条件となります。
厚生労働省の「職場における熱中症予防基本対策要綱」に基づく取り組みや、熱中症予防に資する物品の購入などが支援の対象です。年に複数回の募集期間が設けられており、抽選方式が採用されている点も特徴です。国の補助金と組み合わせて活用することで、より手厚い熱中症対策を実現できます。
参考:暑さに配慮した職場環境づくり支援事業|公益財団法人東京しごと財団
工場で活用できる補助金・助成金には、省エネ・脱炭素化を目的としたもの、生産性向上のための設備投資を支援するもの、熱中症対策など労働環境の改善を後押しするものなど、目的に応じてさまざまな種類があります。
1つの制度だけで工場の課題をすべて解決できるとは限らないため、自社が抱える課題を整理したうえで、複数の補助金を組み合わせて活用することがポイントです。また、補助金は予算上限に達すると受付が早期終了することも多く、年度ごとに制度内容が見直される点にも注意が必要です。
本記事で紹介した制度はあくまで概要であり、各補助金の詳細な要件や申請方法については、今後一つひとつ詳しく取り上げていきます。気になる制度があれば、最新の公募要領を確認しながら、早めの準備を進めていきましょう。