コラム

廃熱回収で省エネとコスト削減を実現!仕組みとメリットを解説

廃熱回収とは、使われずに廃棄されている熱エネルギーを有効活用し、コストの削減や温室効果ガスの削減を図るものです。

近年、社会全体の省エネへの取り組みが強まっていますが、省エネと聞くと電気エネルギーの節約をイメージする人が多いと思います。しかし最近では熱エネルギーの節約が注目されており、その一環として廃熱回収の技術が注目されています。

この記事では、廃熱回収の基本的な仕組み、その重要性、実施するメリットなどについて解説します。

廃熱回収とは?

廃熱回収とは、有効利用されることなく大気中に放出されている熱エネルギーを有効活用することです。

製造業の工場でものを生産する場合、多くの過程で熱エネルギーが使われ、それらは大気中に捨てられていることがほとんどです。しかし、この熱を再利用することで、エネルギーの使用量を削減することが可能になります。

また、膨大な熱を発生させるためには、石油や石炭といった資源を消費する必要があります。当然ですが石油や石炭を使いすぎるとコストがかかるうえに、燃焼には二酸化炭素が発生することで自然環境を脅かすおそれがあります。

廃熱回収を導入することで、石油や石炭など資源の消費量が削減可能です。コストの削減につながるうえに、二酸化炭素の排出量削減にも貢献できます。

「廃熱」と「排熱」の違い

「排熱」という言葉もありますが、これは熱が外に放出されている状態を指します。そのため、まだ熱の行方は決まってないということです。

対して廃熱は、排出された熱が使われずにそのまま廃棄されることを意味しています。したがって、廃熱回収は排熱の処理方法の一つと言えるでしょう。

廃熱回収が注目されている理由

廃熱回収が注目される背景には、社会全体の省エネへの取り組みが強まったことが大きな要因となっています。

日本政府は2050年までに温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする、カーボンニュートラルを目指すことを宣言しました、日本が目指す「カーボンニュートラル」とは、二酸化炭素だけに限らず、メタン・一酸化二窒素・フロンガスを含む「温室効果ガス」を対象にしたものであり、「全体としてゼロに」とは、「排出量から吸収量と除去量を差し引いた合計をゼロにする」ことを意味します。

近年、地球温暖化の問題は深刻となり、対応が喫緊の課題となっています。そのため、二酸化炭素をはじめとした温室効果ガスの排出量抑制につながる取り組みをおこない、あらゆる分野の脱炭素化を目指しているのです。しかし、「2050年までに達成」という目標は非常に高い目標であり、達成するためには大幅な省エネの取り組みが求められます。

そこで、注目されているのが熱エネルギーの省エネです。省エネと聞くと「節電」などをイメージする人が多いと思いますが、製造業のような工場においては熱エネルギーの有効利用が非常に効果的なのです。

その手法の一つが「廃熱回収」です。冷凍機や生産装置による冷却塔からの排熱、温度の高い排水から発せられる熱を有効利用することで、現状の熱エネルギーを効果的に減らすことが可能となります。

また、省エネによるコストダウンや温室効果ガスの削減につながります。つまり、企業にも環境にも大きなメリットがもたらされるということです。

廃熱回収を取り入れるメリット

企業が廃熱回収を導入するメリットは、主に以下の2つです。

  • 熱エネルギー使用量の削減
  • エネルギー効率化によるコストの削減
熱エネルギー使用量の削減

大気中に無駄に放出される熱を活用することで、熱エネルギーの使用量を削減できます。

例えば、製造業の工場では生産の過程で多くの熱が発生します。その熱を回収して次回の生産で再利用することにより、新たに必要な熱エネルギーを減らすことができるのです。

また、廃棄物を焼却するような現場では、石油や石炭といった資源を使って膨大な熱を発生させます。当然ですが石油や石炭の資源は有限ですし、利用すればするほどコストがかかります。しかし廃熱回収をおこなって熱をうまく活用すれば、資源消費を減らし、二酸化炭素の排出削減にも寄与します。「省エネを実践している企業」としての評価を得ることもできるでしょう。

エネルギー効率化によるコストの削減

廃熱回収の実施は、企業のコスト削減にもつながります。

先ほども触れたように、生産の過程で発生した熱を回収して次の生産時に使えるので、その分燃料や電気などの消費量は減ることになります。また、熱は暖房や冷房、温水供給機器などに使えるケースもあるため、それらに必要なエネルギーも賄え、全体的なコスト削減につながるでしょう。

さらに、一定の条件を満たしている場合は再生可能エネルギーの補助金が受け取れる可能性があります。さらなる省エネへの施策を進めることも可能になるでしょう。

廃熱回収の具体例

廃熱回収はすでにさまざまな場で使われています。具体的な例としては、以下のようなものがあります。

  • ボイラーからの熱回収
  • ヒートポンプ技術
ボイラーからの熱回収

廃熱回収の代表的な例の一つがボイラー熱の回収です。ボイラーでは「エコノマイザー」と呼ばれる機器を使って熱を発生して沸かしますが、その過程で出る燃焼排気ガスを利用して、給水の予熱を行うことができます。

廃熱回収をおこなうとボイラーの熱効率が向上し、投入したエネルギーがほとんど使われるため、無駄をなくすことが可能となります。

ヒートポンプ技術

エアコンや冷蔵庫などで用いられるヒートポンプ技術も、代表的な事例といえます。

ヒートポンプとは周囲の空気や地中、水などの自然エネルギーを使って、効率よく熱を移動させる技術です。電気やガスをそのまま熱に変えるのではなく、外部から取り込んだ自然のエネルギーを使うため、消費する分に対してより多くの熱を生み出すことが可能となります。

この技術は工場のような場所でも使われており、廃棄された熱を再利用して、温水や熱風として循環させることが可能です。循環をおこなうことで、大幅なコスト削減につながります。

廃熱回収実施の注意点

廃熱回収の実施はさまざまなメリットがありますが、実施の際には以下の点に注意しましょう。

  • 熱源の温度を確認したうえでおこなう必要がある
  • 不純物の混入に注意する

廃熱回収においてもっとも重要なのは熱源の温度です。高温の熱や排水が発生しているように見えても、目視や感覚で判断するのは正確ではありません。実際にどのくらいの温度の熱がでているのかを数値でチェックするようにしましょう。

また、排水の熱を利用する場合、不純物が含まれていることがあります。効果的に熱を取り入れられなかったり、熱交換器の故障につながったりしてしまうおそれがあるので、不純物が混入しないように注意しましょう。とくに、熱交換器は点検や洗浄など定期的なメンテナンスが必要です。

まとめ

この記事では、廃熱回収の仕組みやその注目されている背景、実施するメリットなどについて解説しました。廃熱回収を取り入れることで、熱エネルギー量の削減やコスト削減をおこなうことができ、企業にも環境にもよい影響を与えます。二酸化炭素の排出量削減にも貢献でき、「省エネを実践している企業」としてよい評価も得られるでしょう。

日本政府が目標としている「2050年までにカーボンニュートラル」はかなり高い目標であり、日本全体での取り組みが非常に重要となります。廃熱回収のような取り組みをコツコツ積み重ねることで地球環境に好影響を与えるため、ぜひ導入を検討してみてください。